Web小説の世界に飛び込もうとしているあなたへ。
Web小説で作品を読んでもらうためには、その独自の書き方を理解することにあります。単に書くだけではなく、Web環境に適した表現方法や読者を引き付けるテクニックを学びましょう。
この記事では、Web小説に特有のルールや、より多くの読者に愛される文章のコツを紹介します。あなたの物語が、オンラインで注目される一歩を踏み出すための必読の内容です。
Web小説には書き方がある
Web小説にはWeb小説の書き方があるのをご存知でしょうか?
これを知らずに一般的な小説、つまり紙の本などを想定して書き始めてしまうと大コケする可能性があります。まずはWeb小説向きの文章がどんなものなのかについて見ていきましょう。
Web小説向きの文章とは
Web小説は、インターネットで読まれることを念頭に置いた書き方が必要です。そのためには、簡単で分かりやすい言葉を使い、読者がスクロール(もしくは流し読み)しながらも楽しめるように、短めの段落を心がけなければなりません。
「なぜ流し読みされるように書かなくてはいけないんだ? せっかくちゃんと書いてるのに……」
心中、察するに余りあります。そうですよね。せっかく設定を練って、魂込めて書いた作品をあえて流し読みされるようにしなくちゃならないなんて意味不明ですよね。
しかし、それがWeb小説を書くにあたっての大原則。いわば誰もが心掛ける一般論だからです。
理由はカンタン。Web小説はスキマ時間に楽しむ娯楽という認識があるためです。通勤中、トイレ中、友達との待ち合わせ中……我々人間には、日常の中に潰さねばならない暇が有り余るほど存在しています。
その暇を埋める一つの手段、かつ我々が提供しているのがWeb小説なのです。
暇に全力投球する人は滅多にいません。SNSを何となく眺める人はいても、ひとりひとりの投稿を細かにチェックする人はまずいないのと同じで、Web小説もそのように位置づけられています。重厚なストーリー、綿密な設定、それらを緻密さと正確さを備えた文章で描写する……なんてことをすれば、即読んでもらえなくなります。要するに、頭をフル回転させなくても読めるような小説がWeb小説では好まれている訳です。
……ちょっと切ない? 悲しい? 仕方ありません。受け入れましょう。というか受け入れるしかないのです。あなたがWeb小説の世界に飛び込もうとしているのであれば、ですが。
前提、自分の作品を読んでもらいたいのであれば、という話です。別に作品投げる場所があればいーや! と思考を切り替えられるのならまったくもって無問題だと思います。
Web小説では読まれない文章
上記の説明から分かる通り、Web小説には読まれない文章も当然存在します。
Web小説で避けるべきなのは、長くて複雑な文章です。読者は通常、スマートフォンやタブレットで読むため、長すぎる文章は読みにくく感じられてしまうのです。シンプルで簡潔な表現を用いることで、読者がサクサクと読み進め、物語を楽しむことができます。
このサクサク感が、Web小説では重要です。
もう一度言います。長くて複雑難解極まりない文章は読まれません。
※ちなみに読んでくれる人もちゃんといる。筆者は結構ちゃんと読むタイプです。なぜなら重厚なストーリー大好物なので!
Web小説の書き方・ルール
以上を踏まえて、Web小説で意識すべき書き方や守られているルールをご紹介します。基本的に・原則守られているというだけの話なので、絶対の規則ではありません。ただ、守られている方が一般的には読みやすいし、(無法地帯のような小説に比較すれば)当然読者さんにも読まれやすくなります。
!や?の後にはスペースを入れる
!(ビックリマーク)や?(クエスチョンマーク)の後にスペースを入れるのは、文章を読みやすくするためです。視認性・可読性がともに向上するため、文章の区切りで引っかかったり、不用意に目を止めさせなくて済みます。
例1
×:やつがいたぞ!つかまえろ!
〇:やつがいたぞ! つかまえろ!
「」の文末に句読点はつけない
会話文で用いる「」の文末には、句読点をつけないのが原則です。なぜかと言われれば回答に困ってしまいますが、おそらく「」の中の文末に句読点をつけないことで、文章がすっきりと見え、読みやすくもなるからでしょう。世に出回っている小説のほとんどがこの書き方に則っているかと思います。
もう一つ付け加えるなら(これはとても筆者の感想ベースで申し訳ないのですが)、単純に見栄えが悪いです。畑から掘り起こしたばかりのジャガイモみたいな字面になります。
例2
×:「ぼくがコペルニクスだったら、金髪のマッシュルームヘアにしちゃうね。」
〇:「ぼくがコペルニクスだったら、金髪のマッシュルームヘアにしちゃうね」
…(三点リーダ)は2個つける
三点リーダ(…)は、思考の途切れや言葉のためらいを表現するのに役立つ技法です。キャラクターの言葉にならない感情や逡巡している間を効果的に表現できます。
他にも2個つけるものとして、「――(ダッシュ)」があげられます。また、三点リーダとダッシュを混在させるのも基本的にはナシと考えてください。
例3
×:「進撃の巨人が進撃しなかったらどんな名前だったのかな…?」
〇:「それはもはや進撃の巨人っていう漫画ではなかったんじゃないか……?」
文字の表記を統一する
文章中で表現する単語において、漢字やひらがな、カタカナなどは統一して使用しましょう。
同じことを言っているつもりでも、書き方が異なるだけで全く別物と認識される恐れがあるからです。せっかくあなたの小説を読んでくれている読者さんを、惑わせるようなことはしないのが吉。表現や物語の構成上どうしても異なる表記にしなければならない場合などを除いて、基本的には守りましょう。
例4
×:「儂は次元の旅人。お前さんの胃袋はこちらのものじゃ」→「わしはお前さんを思って……」
〇:「儂は次元の旅人。お前さんの胃袋はこちらのものじゃ」→「儂はお前さんを思って……」
固有名詞は漢数字、アラビア数字は半角で
人名や地名などの固有名詞には漢数字を、一般的な数字にはアラビア数字を半角で書くことが一般的です。
肩肘張ってこうしろという規則ではありませんが、最低限どちらかの表現に統一するのかは決めておいた方が良いでしょう。
1時なのか一時なのか。二個なのか2個なのか。これらがごちゃごちゃになると厄介なのは……次の例を見て実感していただければと思います。
例5
×:「一挙手1投足で砲弾を3時の方角へ九十七発撃ち込め!」
〇:「一挙手一投足で砲弾を3時の方角へ97発撃ち込め!」
もちろん、漢数字で書きたい場合は書いても大丈夫です。実際筆者は上記の例のような場合、九十七発と書きます。大事なのは作中での表現ルールが統一されているか否かです。
スマホで読まれることを意識する
Web小説の読者のほとんどは、スマホで読む場合がほとんどです。前述した通り、暇を埋めるための手段がWeb小説。そのためにノートパソコンを開いたりわざわざデスクトップから読み始めたりはしないのが普通です。
したがって、Web小説を書く時はスマートフォンで読まれることを意識して執筆することが重要になります。具体的には一文を短くしたり、適度な場所で改行をして行間をあえて作ったり……などコツは様々です。
読まれるWeb小説を書くコツ
Web小説を書く時には、読者が夢中になるような魅力的な物語を作ることが大切です。ここでは、Web小説がもっと読まれるためのいくつかのポイントを「書き方」に絞って紹介します。これらのコツを実践することで、あなたの小説がより多くの人に楽しまれるようになるでしょう。
具体的なポイントは下記になります。
- リズミカルな文章にする
- 一文の長さに配慮する
- 文末の表現を工夫する
- 接続詞の多用を避ける
- 漢字の使用割合に注意する
ひとつずつ見ていきましょう。
リズミカルな文章にする
読者が楽しく読めるように、Web小説の文章はリズミカルにしましょう。リズムがあると、話がスムーズに進み、読みやすくなります。音の響きや言葉の選び方に気をつけることで、物語に生き生きとした印象を与えられます。
一文の長さに配慮する
Web小説では、一文の長さがとても重要です。あまり長すぎると読むのが大変になり、短すぎると物語の流れが途切れてしまいます。適度な長さにすることで、読みやすく、理解しやすい文章になります。
適度の塩梅が難しいんですよね……筆者も苦戦しています
文末の表現を工夫する
文章の終わり方にも工夫が必要です。文末の表現を変えることで、感情や雰囲気をより豊かに伝えることができます。読者が次の文を読みたくなるような、興味を引く文末を心がけましょう。
接続詞の多用を避ける
Web小説で接続詞を多用すると、文章が単調になりがちです。必要以上に接続詞を使わず、自然なつながりを意識しましょう。ストーリーがスムーズに流れ、読者を次のページへ導きやすくなります。
例6 ×:
天を破るように降りてきたのは一人の少女だった。足首にも届く長い金髪が暴風に吹き散らされているが、しかし少女は右目の下に刻まれた魔法陣を愛でるように指で撫でているだけ。
そして少女は静かに告げた。
「貴様が『選定者』か?」
そして少女は右手にもつ三メートル超の槍を何の前触れもなく振りかざした。
槍が生み出したのは衝撃波――だと思ったのが少年の敗因だった。
地面を蹴り上げた少年の体が我先にと少女の元へ突っ込んでいく。
「ならテメェが『次元旅行者』かクソッタレが!」
少年はその瞳に宿した力を振るわんと拳を握りしめ、
そして。
「そして」を多用した例です。しつこいし、二人の動きが極めて単調というか事務的に感じてしまいませんか? ……もしそう感じなくても、それは自然なことです。「そして」は万能すぎる接続詞なので、前後の文章に脈絡がなくても何となく繋がっているような気がしてしまうのです。だからこそ多用していることに気がつけません。
接続詞の多用には注意しましょう。
漢字の使用割合に注意する
Web小説では漢字の使い方も大切です。漢字が多すぎると読みにくくなりますし、少なすぎると文章が幼く見えることがあります。適切なバランスを見つけることで、幅広い読者に読まれるWeb小説になります。
筆者がこれまで獲得してきた情報では、作品全体を通しての漢字使用割合は2割~3割くらいがベストなんだとか。もしこの記事がWeb小説なら完全にアウトでしょう。
Web小説のNGな書き方は?
Web小説を書く際には、避けるべき書き方もあります。
単刀直入に言えば、ここまでで紹介してきたWeb小説の書き方と逆のことをすればNGになります。すなわち、ムズカシイ漢字ばかりを使う・一文が長く主述の関係がわかりづらい・テンポ感がない……などです。
ただし注意点として、絶対NGではありません。あくまでも多くの読者さんに読んでもらうための書き方のコツとして傾向的にこうですよという話であって、必ずこれら規則・原則を順守しなければならない訳ではございませんのでご安心くださいませ。
(筆者はビリビリに破っています。面白ければ読んでくれるでしょう!というスタンスで書いているので……)
Web小説を無料で書ける・投稿できるサイトまとめ
では最後に、Web小説(ネット小説)を無料で投稿・公開できるサイトをご紹介します。いくつもありすぎてどれがいいか選べない!という方は、各サイトがターゲットにしている読者層や、強みのあるジャンルとあなたが書きたいジャンルのマッチ性を考えてみることをオススメします。
サイト名 | 強み | ジャンル |
カクヨム | ・KADOKAWAが運営するサイト ・コンテストの開催多数 ・ライバルがとても多い | ライトノベル ファンタジーやラブコメが多め |
小説家になろう | ・250万人以上の会員(24年1月時点) ・ランキング上位の書籍化のしやすさ ・作品数が多く埋もれることも多々 | ライトノベル ファンタジー、恋愛 異世界転生系など |
アルファポリス | ・恋愛系が強く女性ユーザーも多い ・投稿インセンティブでお小遣い稼ぎ可能 ・独自のポイントシステムで書籍化を著者側から申請できる | ライトノベル 恋愛系 異世界転生系、ファンタジー |
エブリスタ | ・『ケータイ小説』時代からの歴史あるサイト ・ユーザー層は女性が多め ・コメントや感想がつきやすい | ライトノベル 恋愛系、ライト文芸 ミステリー、ホラーなど |
ノベルアップ+ | ・玩具メーカーであるホビージャパンの運営サイト ・感想や応援をスタンプで送れる ・サイトデザインがかわいいと人気 | ライトノベル ファンタジー、SF ホラー、純文学 ラブコメなど |
さいごに
本記事では、Web小説の書き方について紹介してきました。どれも大事なことですが、しかし筆者は思います。一番重要なのは、あなたがこれから生み出そうとしている作品が誰かの心を動かす可能性を秘めていること、そして偶然にもあなたは小説を書く人であるという奇跡、何よりきっとあなたは小説を書く事が大好きな人であるということ。
書き方などに縛られる必要はありません。思うがままの作品を生み出してください。筆者も読者さんを感動させられるような作品を書けるように精進します。一緒に頑張りましょう!