台詞回しのセンスを磨くコツ5選!そもそも本当にセンスなの?

インスピレーション

台詞回しとは?

 台詞回しとは、小説や舞台などの表現の中で、キャラクター(人物)が発するメッセージをより効果的に伝えるための技術です。言葉の選び方や発声時の抑揚、リズムやテンポを工夫することで、読者に強い感動や共感を呼び起こす力を持っています。

 台詞回しは小説や漫画だけでなく、劇や映画、会議でのプレゼントなど、様々な場面で用いられるもの。単なる言葉の羅列ではないからこそ、キャラクターへの深い理解や彼らをその状況に至らせた環境・背景などを落とし込む事で、物語の幅が一気に広がっていくのも特徴的でしょう。

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台詞回しはセンスって言われるけど……

 さて、巷でよく話題に上がることについて、当オウンドメディア『うぃずのべる!』でも触れてみたいと思います。すなわち、

『台詞回しはセンスであるかどうか』

です。皆さんはどう思われるでしょうか?

 実際、筆者も台詞回しはぶっちゃけセンスじゃない?と思っていました。そしてきっと、それは筆者だけではないと思われます。

 そこで、少し話は逸れますが、小説や漫画に数多く触れているネットユーザーたちが、我々が現在議題に挙げている台詞回しについてどのような認識を持っているかを見ていきましょう。

読者の声

A氏
A氏

台詞回しがヘタクソな作品は読む気なくなるし、やっぱセンスって大事だよね

B氏
B氏

キャラとか物語はテンプレ化してるけど、会話に限ってはそうじゃない。つまり作者の力量=台詞回しだし、売れてる作家は大抵この辺りのセンスが異様に高い。

 上記の意見・感想は、ネット掲示板に投稿されていた内容です(一部筆者が翻訳しています)。ここで紹介しているのはほんの一部ですが、他にも回遊してみればどれだけ多くの人たちが『台詞回しはセンスである』と感じているかをご理解いただけるかと思います。

 では真偽はいかほどか。筆者は答えを出す最も簡単な方法を知っています。それは、

『プロはなんて言うだろう?』

 という身も蓋もない話。台詞回しが才能に依存する力なのかを調べていくうちに、『プロ』が語っているインタビュー記事を発見いたしましたので、そちらの内容を抜粋しましょう。

 さて、プロは台詞回しをどう捉えているのでしょうか?

実はセンスだけじゃなかった!

結論、台詞回しはセンスだけではないとプロは語っています。二つの事例を挙げましょう。

大物漫画家のインタビュー

”自分はワードセンスゼロなのは自覚しているんですよ。ふたつの言葉を1つにまとめる時に、何かないかなーって毎回ネットで検索しては「全然ないや」って。でもネットで検索できるものではないんですよね。ああいうものって。辞書には落ちていない言い方がいっぱいあって、でもそれを編み出すセンスが自分には全然ない。しかも年を経るごとにどんどん言葉への感度は鈍くなっていくので。”

「セリフは、ただただ形を整えているだけ」――ジャンプ漫画賞ポータルサイト

 こちらの抜粋は『魔人探偵脳嚙ネウロ』や『暗殺教室』で超有名な松井優征先生がワードセンスについてお話されたインタビューです。

 このインタビューは、松井先生の作品の大きな魅力であるセリフはどのように磨かれたのか?という問題提起から始まっています。

 それに対し、松井先生は「自分はワードセンスゼロなのは自覚している」「辞書にない言い方はいっぱいあるのに、それを編み出すセンスがない」「ただ形を整えているだけ」「久保帯人先生とか凄まじい」とかなり厳しい目をご自分に向けられています。

 謙虚さの一つだろう、とか、自分でワードセンスあると断言するのもおかしな話だ、という意見ももっともだと思います。なにより、あれだけの作品を描かれている先生の台詞回しやワードセンスが下手なハズがないと直感してしまうのが正直な感想ですよね。

 しかし松井先生は、台詞を書くにあたっていくつか意識していることがあるそうなのです。きっとその意識こそが、台詞回しのセンスを磨く手段の一つ――なのだろうと筆者は感じました。具体的なテクニックについては、記事後半の『台詞回しのセンスを磨くコツ』でご紹介します。

脚本家の事例

 次は、テレビドラマの脚本コンクールで、応募総数3,000篇の最終候補まで残ったという実績を持つ脚本家さんの事例です。

 彼はこう言います。「『台詞はセンスである』はウソである」と。

 脚本家を目指す以上、人一倍言葉に、ひいては台詞に触れてきた脚本家の言葉には一定説得力があります。実際彼が書き上げた創作論エッセイでは、台詞をイキイキとしたものにするための具体的なテクニックを詳細に説明しています。

 それをじっくりと読んだ筆者は確かに感じました。「台詞回し、磨けば光らせることできるんじゃない?」と。それくらい体系的かつ実践を想定して台詞回しに言及されていたのです。

削られない宝石センスはただの石ころ

 台詞回しがセンスによって決定されるなら、センスがない人間は何をしても無駄――。

 そんなはずはないと、松井優征先生も脚本家さんも断言しています。

 その根拠は当然、彼らが蓄積してきた経験という定性的なものではありますが、結果と成果を残している人の発言です。一定納得感および説得力はあるのではないでしょうか。

 しかし頭ではわかっても、心ではまだ受け入れられない部分もある、それが人間というもの。

 そこでこの後は、台詞のプロたちが、台詞回しのセンスをどう磨いていくかについて語っている内容を5つにまとめてみました。どれも参考になる情報だと思いますので、活用できそうなものはぜひご自身の創作活動に生かしてみてください。

※はつね注:松井先生が全部言っていた、という訳ではありません。筆者が本記事を執筆するにあたり、様々なインタビューや記事を調査した結果をまとめました、という話です。

台詞回しのセンスを磨く5つのコツ

 良いとされる台詞回しはキャラクター同士の会話を魅力的に映し出し、ストーリーにいっそうの深みを持たせることが可能です。

 そのセンスを磨いていくには、以下の五つのポイントを意識してみましょう。

かけあいを生みだす

 小説に登場するキャラクターたちの良くない台詞の例として、以下のようなやり取りが上げられます。

 虎杖「五条センセー、釘崎がパンダにかかと落とししてた」
 五条「(釘崎)野薔薇がパンダにかかと落とししてたの!?」

 違和感持ちませんか?
 そうです、これがダメと言われるのはこのやり取りはかけあいではなく内容の確認だからです。

 そもそもキャラクターたちは異なる生き物。生まれ育った環境も違えば、ランチに五〇〇円が高いか安いかでも意見が割れる事がある。彼らはそういう存在です。エンターテインメントにおいて、そんな彼らに事実の確認をさせる必要はどこにあるのでしょうか?

 虎杖「五条センセー、釘崎がパンダにかかと落とししてた」
 五条「パンダには後ろ回し蹴りのほうが効果的だヨ」
 虎杖「五条センセーってほんとにセンセーなんだよね⁉」

 ……筆者的には、虎杖がこんな風にツッコんでくれていたら面白いなぁと思いました。

 大事なのは確認ややりとりではなく掛け合いなのだと痛感します。

状況説明はしない

 余分な状況説明も極力避けるようにするべきでしょう。キャラクターたちを取り巻く環境を適切に描けば、そこに追加するものはもうありません。読者に考えたり予想させたりする思考の余地を与え、想像力を存分にかきたてさせることで、より印象的な台詞になるはずです。

 冗長な状況説明をする文章は可能な限り避けましょう。

ワンフレーズにも工夫する

一つのフレーズにもこだわりを持つことが、台詞回しのセンスを磨く第一歩となるでしょう。言葉の響きやリズムに注意を払い、印象的なフレーズを生み出すことができれば、読者の頭の中でもキャラクターが動き出し始めるはず。

 工夫と聞くと、どうしてもいかに尖った表現をしていくかに考えが偏りがちですが、それよりもこのキャラならなんて言うだろう?と徹底的に考え抜くことが大事なのではないかと筆者は感じました。皆さんはいかがでしょうか?

無駄な台詞は書かない

余計な台詞や冗長な台詞は会話(かけあい)の流れを妨げ、読者や視聴者の没入感を損ねる恐れがあります。シーンやキャラクターの性格に適した言葉を選ぶことで、「ストーリーに必要なくない?」と感じさせるような台詞を含まないようにしましょう。スムーズに進行する会話劇は台詞回しの基本だと言えそうです。

質問に答えない

 重要なテクニックの一つとして、質問にすぐには答えないというものがあります。直接的な回答を避けてオリジナリティあふれる返答をさせることで、会話やストーリーに一気に深みが増します。それと同時に興味をかきたてることもできるので、たとえば質問に対して反問をしてみたり、答えをほのめかしつつ全然別の事を言ってみたり……など、読者の期待値をあげつつ解釈の余地を増やす台詞回しをしてみましょう。

まとめ

 台詞回しはセンスだけではない――。

 少なくとも筆者はそう思いながら、日々の執筆活動に取り組んでいきたいと思います。

 センスは磨く。磨けば光る。そう信じて、今回学習した五つのコツを実践していきたいと思います。

 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

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